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音楽クリエイター・クサノユウキ インタビュー Part3(連続3回)


 

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お待たせいたしました。クサノユウキさん・インタビュー第3弾です(これまでのインタビュー:Part1Part2)。今回はいよいよ、クサノさんの今後の気になる展開について、たっぷりとお話いただきました。

 


インタビュイ―:クサノユウキ

インタビュアー:笹野正和
構成:笹野正和
(2010年2月17日@福岡・大橋)

(上写真:イリジウムライブ風景) 

今回はまず、他ジャンル・作品とのつながりや福岡の音楽業界の状況について伺いました。その中から、クサノさんが目指されている、東京(中央)にも福岡(地元)にもこだわらずに、全国へと活動を広げていく方向性を伺うことができました。そのお話は、7月1日からのFM高松、サイマルラジオ(ネットラジオ)での番組制作、全国各地でのライブイベントなど、これからの音楽活動に対するクサノさんの基本的な考え方を、強く反映しているように思えます。

さらに当インタビュー記事の掲載直前に、イリジウム名義でのメジャーデビューが発表されました。CDは今冬のリリースが予定されています(イリジウム・ブログでの発表)。また瑞野ゆうかさんとのユニット「たなごころ」名義にて、来年初春ごろのメジャーデビューも決定しています。

作曲・プロデュース・ライブツアーとますます活躍の場を広げられているクサノさん。その音楽活動の理念が凝縮しているPart3を、どうぞご覧ください!

 

他ジャンルとの関連性

ドネルモ

それでは、クサノさんの活動から見て、ゲームやアニメとの関連性や展開について、今後も含めて聞かせていただけますか?

例えば『戦極姫』や『萌え2次』との関連で言えば『ストライクウィッチーズ』(*1)、バンド活動で言えば『けいおん!』と、いろいろなジャンルを含み込む形でできていると思うんです。

クサノ

何かとのつながり的に話をすれば、システムソフトさんは割とトレンドに敏感な部分が多いと思います。例えば『萌え2次』は『ヘタリア』などに通じるものがあるし、『戦極姫』は『恋姫†無双』(*2)などの流れも少なからず汲んでいるのだとも思います。

もちろん「パクリ」などではなくて、コンセプトやアイデア、空気を共有するといいますか。そういう部分は、自分が曲を作る上でもあります。逆に、他の作曲家さんも、みんなそれをやっているので、上手く回っているところではあるのでしょう。

クサノユウキ・プロフィール

作編曲家・演奏家(ベース)。1979年生。九州大学大学院人間環境学府(教育学)修了。幼少時のピアノ聴音から絶対音感を培い、独学で作編曲を学ぶ。高校時代よりコンピュータ音楽に傾倒し、バンド活動を始める。

2006 年大学院在学中に、音楽ユニット「イリジウム」をタカセカヤ(ボーカル・作詞)と結成、TOSHI(X JAPAN)や声優・白石稔とイベントを同じくする。2008 年、PCゲーム『戦極姫』OP曲「火群-ほむら-」で高い評価を得る。

一方で、2008 年から音楽制作事業「77works」を立ち上げ、ゲームの主題歌やBGM、CM音楽などの制作に携わり始める。2009 年より、映像クリエイター・山元隼一が監督する作品の音楽を複数担当する。参加作品の『熱血宇宙人』は「第14回アニメーション神戸」にて優秀賞を受賞し、神戸市のプロモーションアニメ『神戸と私』は上海万博でも公開され好評を博す。現在では、イリジウムとしてライブ活動を行う一方、77worksとして多様なジャンルでの音楽制作を展開している。

◆メジャーデビュー

イリジウムでは、2010年冬にメジャーデビューシングル「ALWAYZ!!」をマジックアイランドレコードからリリースすることが決定している。また、もう一つのユニット・たなごころでも、2011年初春ごろのメジャーデビューが決定している。

イリジウムでは、2010年の冬にメジャーデビューシングル「ALWAYZ!!」をマジッ
クアイランドレコードからリリースすることが決定している。
また、もう一つのユニット・たなごころでは、2011年の初春ごろにメジャーデ
ビューが決定している。

  

「CrazyPumpkin」PV(九州大学・芸術工学部の学生クリエイターとのコラボレーション作品)

イリジウムHP http://iridium77.net/
77worksHP http://77works.com/
ツイッター https://twitter.com/xano_yuuki

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例えば、ちょっとイメージをかぶせるように考えたのは、『萌え2次』がそうですね。自分が初めて萌え系の曲を作るにあたって、何か既存のイメージを崩す前提のひな形は必要です。でもそれがあまりに突き抜けてしまうと、ゲームのイメージに合わない。そうすると「今回のゲームに合うように、ひな形をカスタムしていきましょう」となります。それで、カスタムで外すものは外して、プラスするものは他の曲の部品だったりするわけです。

例えば今回、メロディ的なキャッチーさで、すごく意識したのは、『マイメロ』(*3)ですね。(その主題歌を作った)渡部チェルさんという人がメロディメーカーで、個人的にすごく好きなんです。「オトナじゃない オトメです」って、よくやったもんだなあ、と考えながら。

あと盛り上げ方は、京アニの神前(こうさき)さんとか、『ハレ晴レユカイ』の田代さん達が作り上げている曲の世界観に、まずは乗っかってもおかしくはないんじゃないか、と。「ウチはもうメロディと歌詞で勝負だ」という感じです。でも逆に、そうやって作った曲に対して「他の作品の匂いもするから好き」という評価も確実にあるでしょう。一緒(=パクリ)だったらブーイングの対象なんですが、他の人に元ネタを意識させつつ聴かせて、「ああ、言われたら分かるような気がする」というくらいだったら、大成功ですよね。逆に「分かる、分かる」と言われたら、「俺、ひねれてないじゃん」ということで、大失敗なんですけどね。

ドネルモ

ちょっとづつ要素を入れてるんですね。深く聴いて、言われてみれば分かるレベルですね。

クサノ

「ああ、好きなんですね」というレベルです。

逆に、好きなものを前面に押し出して、短い尺でやっちゃうのは、CM音楽の領域ですね。CM音楽は、本当にパッと3秒で聴いて、どういうイメージか分かるように、あらかじめ記号性をもった音楽の型を、そのままモチーフにポンっと持ってくることが多いんです。「この曲みたいな感じで(お願いします)」とか。

ドネルモ

作り方として、パッと聴いてイメージが分かるようになってるんですね。すると他の「ほっともっと」とか九州電力のCMの時とは、考えられてることも違いますか?

クサノ

結構違いますね。特に九州電力のものは、「大体こういう感じで、女の人のコーラスが入ります。それに安定感をください」という、割とカチッとしたオーダーがやってきました。だから、CMの内容うんぬんというよりも、まずはそのオーダーシートがどうしても中心になるんです。

でもゲームの主題歌の場合は、長尺だからいろいろ冒険できる面があります。長尺といっても、クラシックの人からしたら全然短い作品です。でも1分を超えるものは、CMの人から見ると長尺ということになります。そこで曲を作る時によく考えることがあって、それはおそらく菅野よう子さん(*4)に近いかもしれません。

菅野さんに会ってお話したことはないから、本当にそういう作り方かは分からない。だからあくまで類推になるのですけど、自分が今まで聴いて「いいな」と思ったパーツを集めておくんだと思います。そして「ここら辺のこのパーツだけ使いましょう。とりあえず候補に入れておきましょう」という風に、頭の中のイメージとして固形物を持つ。

それから「これを使おう」といって、まずハンマーでぶったたくんですよ。するとバラバラになりますよね。それをモザイクのように寄せ集めて、すごくカッコいい作品として、一つの作品を作っちゃう。元のものの良さも生かして、なおかつ自分のオリジナリティもその上に乗っける。そういう非常にオイシイというか、作り手の鑑のような作り方を、菅野さんはされてると思います。

そこは自分も割と意識しつつ、やってるんですよ。使う部品も大きすぎたらカッコ悪いし、逆に、誰にも分からないような感じなら、その部品を使う意味がない。

異質なものを混ぜる作品作り

ドネルモ

そうすると、絶妙なバランス感覚が必要ですね。完全なパクリでもないし、完全なオリジナルでもない。

僕も昔は『信長の野望』の菅野さんを、当たり前のように聴いてたんです。でも後になると、『マクロスF』とか『創聖のアクエリオン』とか『カウボーイビバップ』の曲を、時代ごとに作っていて、そのジャンルの音楽を本職の人よりも高い完成度で出してくる。変わり身が早くて、カメレオンのように変化できるし、どんな音楽にも適応できる。だから、いわゆる芸術家肌じゃなくて、デザイナー肌という感じがします。

それで河森監督の作品(*5)には菅野さんの音楽がないといけない。というか、すごくシンクロしてますよね。

クサノ

特に最近はそうですね。

ドネルモ

歌のために映像がある感じで…。そういう関係性も、音楽と映像との理想的な関係なのかな、と思うんですが。

クサノ

自分も、その辺を狙ってやってるところはありますよね。

例えば今、九州大学芸術工学府の山元隼一さん(*6)とのプロジェクトで、『熱血宇宙人』というものがあります。そこで僕が、監督の意向に差し障りない範囲で、音やタイミングに関する演出にもいろいろと関わらせてもらいました。例えば、「ここの間はもっと短い方がいいんじゃない?」と言わせてもらったり、「(クサノ:)ここの音楽のオーダーはこう言われたけど、どっちかというとこうじゃないですか?」「(山元:)ああ、いいですね」みたいな感じで、二人三脚です。イリジウムもそうかも知れないけど、対話的に作るのがすごく楽しいですね。

菅野さんも、そういうやり方みたいですからね。何かの本に「Vガンダムの音楽を巡って富野(由悠季)さんとケンカした」とか書いてあったし(笑)。

ドネルモ

河森さんとも蜜月ということですかね。

クサノ

それについて言うと、映像班と音楽班がバラバラに作ると、「守備範囲」がかぶる可能性があるんですよ。例えば、映像でバリバリに盛り上がってるシーンに、盛り上がってる音楽をつけるという正攻法が王道としてあります。殺陣(たて)で喩えれば、バラバラに戦っていて、二人同時に同じ相手を切っちゃうとか、何かもったいない。場合によっては、あまり見た目が美しくない。

その一方で、盛り上がってるシーンの時に、すごく悲しい音楽をつける。あるいは、映像では盛り上がらないけれど、ドキドキ感を伝えるような、鼓動のある音楽を出す。そういうやり方もあります。

菅野さんは、どちらかと言うとこちらですよね。映像としては出てないけど、作品として出したいもの、それを充たす形で音楽が入り込んでいく。そういうグランドイメージがあるみたいです。これは本当に二人で背中合わせに戦っている感じです。

ドネルモ

(正攻法だと)どちらも盛り上がりすぎていて、お互いが戦っちゃうわけですね。

クサノ

オーディエンスにそう思わせるのは、面白くないです。その辺りを考えて、ゲーム主題歌でも歌詞を入れる時には「別にあらすじを入れなくていい」と思っています。多分それは映像で言い尽くせるので、わざわざ歌詞に入れなくていい。そういう削り方をしてます。

マンガでいえば、本当にいいバランスになってくると、だんだん地の文が減ってくる。でも気の利いた文章は残っていく。その境地に辿り着きたい、という思いがあります。

ドネルモ

無駄なぜい肉は落としていく。でもすごく効果的に台詞や映像がマッチする。音楽もそういう形で効果的に出てきて、お互いが役割を果たし合う。そういうイメージですか?

クサノ

エロゲーでも、普通のゲームの音楽でも、元々の作品の意向が強くて、音楽はそれと異質なものとしてやってくる。その音楽を、制作ディレクターさんが作品に合うように、グニャッとやや歪(いびつ)に整形する。そして実際に人前に出した時に、「ああ、マッチしてますね」と評価されることが多いと思います。

でも本当は、カチッとはまる形で出したい。そうするとカッコいいなあ、と。

ドネルモ

なるほど、無理やりに合わすのではないんですね。そういう作品で理想的なものはありますか?

クサノ

まず菅野よう子作品があります。やっぱり監督と音響・音楽担当の方がくっついているところは、うまくいってますよね。例えば宮崎駿と久石譲、押井守と川井憲次、最近だったら山本寛と神前暁(*7)といったコンビネーションですね。

「『熱血宇宙人』もそういう形になりたいよね」と思って、色々試してる部分があります。「(クサノ:)この曲はギリギリ『ドラえもん』で大丈夫ですか?」とか(笑)。

ドネルモ

映像が結構グイグイと引っ張っていく感じなので、音楽もまた味を出すという関係ですか?

クサノ

そうですね。本当に「ボケにはボケで対応するような感じが正しいんだ」というこの作品独自の感覚は、たぶん監督と話していて気付くしかなかった。あの宇宙人は、「どうです?面白いでしょう?」という風な一歩引いたプレゼンではなく、「作り手側も熱血なんです」という松岡修造的なスタンスで、何の恥も体裁もなく出しちゃうのが大事だ、とあらかじめ聞いていました。だからこれは「『ギリギリでドラえもんじゃなく聴こえるように』とか、そんな小細工は無しだ!」というところからスタートさせたんです。

ドネルモ

するとコンセプトとして、どちらも熱血でぶつかり合うという感じですね、なるほど~。

…アニメが積極的に音楽をフィーチャーしたり、モチーフにしたりすることは、『けいおん!』などで京アニがよく得意にしてますが、クサノさんの77worksでもそういう方向性はありますか?

クサノ

そうですね。もちろん表にバンと名前が出るような歌モノの曲は、やりたいのは山々で、やれと言われれば、喜んでやります。でもやっぱり後ろのBGMとして、いい空気にしたいというのもありますね。

(*1)『ストライクウィッチーズ』

2008年に放送されたテレビアニメ(監督:高村和宏、原作:島田フミカネ)。少女がプロペラ状の「ストライカーユニット」を足に装着し、ほぼ生身で異形の敵と空中戦を行うというファンのツボを押さえた設定と、美少女キャラクターが織りなす日常の描写が人気を呼び、文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選ばれた。

同作のキャッチコピー「パンツじゃないから、恥ずかしくないもん」は一世を風靡する言葉となった。今年7月には第2期がテレビ放映されている。

『ストライクウィッチーズ2』OP

(*2)『ヘタリア』『恋姫†無双』

 『ヘタリア』は日丸屋秀和のマンガ、およびそのアニメ化作品。世界各国を擬人化・キャラクター化し、世界史における各国の関係・エピソードを題材にしつつ、ギャグ・恋愛模様などのアレンジを加えて人気を呼んだ。

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『ヘタリア』©日丸屋秀和

『恋姫†無双』はBaseSonから2007年に発売された美少女PCゲーム。古代中国・三国志の武将を女性化し、三国志の舞台・世界観を取り入れつつ、恋愛要素を取り入れた美少女ゲームとして成功し、続編や数度にわたるアニメ化も行われた。

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『恋姫無双』©BaseSon

(*3)『マイメロ』

2005年から07年にかけて放送されたアニメ『おねがいマイメロディ』の略。サンリオのキャラクター「マイメロディ」の30周年を記念し制作された。ファンシーな外観をしたキャラクターたちのやり取りを、現実社会の問題を織り込みながらも、笑いも含めて明るく描いた少女向けアニメ。

『おねがいマイメロディ』OP「オトメロディ」

(*4)菅野よう子

作曲家・プロデューサー・歌手。1980年代に『信長の野望』などコーエーのゲーム作品の音楽で高い評価を得た。90年代以降は、アニメ『カウボーイビバップ』や富野由悠季監督の『ガンダム』シリーズ、河森正治監督の『創聖のアクエリオン』『マクロスF』などの音楽を手がけ、アニメ音楽を代表する作曲家となっている。その作風は、特に固有のジャンルを持たないが、ありとあらゆるジャンルの音楽を、そのつど高いクオリティで制作する点が特徴的。

CM曲でも、マイクロソフトやトヨタ自動車、ほっともっとなど膨大な作品を手がけており、2008年にはCM曲だけを収録した「CMよう子」が発売された。

『マクロスF』OP「ライオン」full(静止画像のみ)

マイクロソフトCM「宣言編」

(*5)河森監督作品

 特に有名なのは『創聖のアクエリオン』(2005年)や『マクロスF』(2008年)だが、2001年に放送された『地球少女アルジュナ』もCGの完成度や環境問題や自然との共生といったディープなテーマ、演出・物語の奇抜さが記憶に残る作品。

(*6)山元隼一

アニメーション作家・映像ディレクター。個人制作アニメ『memory』(2009年)で第十四回アニメーション神戸デジタルクリエイターズアワード・最優秀賞、『熱血宇宙人』で同アワード・ダイナマイト賞を獲得。その後、音楽グループ「CHEMISTRY」のPVや神戸市PRアニメ「神戸と私」などを発表し、狭義のアニメにとどまらない様々な映像ジャンルで活躍中。

『memory』

『熱血宇宙人』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(*7)宮崎駿と久石譲、押井守と川井憲次、山本寛と神前暁

いずれもアニメ監督とその音楽作曲者。宮崎・久石は『風の谷のナウシカ』(1984年)以降のスタジオジブリ作品、押井・川井は『攻殻機動隊』(1995年)シリーズ、山本・神前は『涼宮ハルヒの憂鬱』(2006年)など京都アニメーション作品で、それぞれの年代を代表するアニメ監督・作曲家。

 

 

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 音楽業界での活動

ドネルモ

先程は福岡でのギャルゲー業界の話を伺いましたが、今度は音楽業界の中でのクサノさんの活動についてお話いただけますか?

クサノ

音楽業界でいえば、「色んなことにチャレンジしてなんぼだ」という思いがあるので、軸はあるけど、一つのことにはとらわれずに、色々とやってみたいですね…。

例えば今度、アニメではなく演劇の主題歌的なものに携わってみたりして、どんな反応があるか、チェックしてみるのもいい。他には、全然知らないアーティストのプロデュースもできれば、と思います。音楽的なプロデュースで、この歌手に合う曲をつけてあげる、という。もちろん知っている歌手に楽曲を提供することは今もありますが。

ドネルモ

なるほど。それこそ音楽業界には「東京に行かなきゃ」みたいなところがあって、avexに発掘されたり、最終的には全国的な所まで行きたい、という欲望が皆にあるように思える。でも、それに乗っかれない人もいて、東京に対するある種の羨望がより強いようにも見える。ただ福岡にも、そこでちゃんとやってる人達はいるはずなんです。その辺の状況がどうなってるか、教えていただけますか?

クサノ

やっぱり福岡は、ある程度まで行くと上京する、というパターンがどうしても多くなってますね。椎名林檎もデビュー前に上京してましたし。

個人的に気になっていたのは「豚骨ピストンズ」。今は「T-Pistonz」になってて、『イナズマイレブン』の主題歌をされてます。元々博多弁で歌を歌っていて、何か関係があるのかな、と調べてみたら、やっぱり先に上京して向こうで活動されているんですね。東京で福岡を押し出していて、目にとまったという流れらしいです。

そういえば、福岡在住で特定のゲーム制作会社とかに絡んでない状態でゲーム音楽を出しているオリジナルネームのアーティストは、イリジウムだけらしいです。「T-Pistonz」が少々かぶってるかも、と思ってたんですが、福岡の中で見るとそうではなかった。

ドネルモ

そんなに新しいというか、特別だったんですか?

クサノ

なぜか今まで無かったみたいなんです。できたはずなのに。ずっと福岡で活動していてアニソンシンガー・アーティストになった人は結構いるはずなんです。最近でいうと、『レスキューファイアー』のエンディング曲を担当された「Rey」さんも、福岡の音楽専門学校からスタートしたんだけど、東京に出てデビューという形になってますね。

ドネルモ

そうすると、在福でオリジナルネームで活動しているグループは無いんですね。

クサノ

無いらしいですね(※)。もちろん、ゲーム会社内の音楽チームのブランドで出している所はあるんですが。ウチもなんだかんだ言って、半分くらい「システムソフト・アルファー芸人」みたいになってますが、基本はインディペンデントです。

ドネルモ

それだけ、やっていくのが難しい?

クサノ

探り探りですね。逆に、初めてで探り探りでやっている時に、「面白そうだから手伝うよ」と言ってくれてる人がいるから、うまく回ってるところはあります。金になるとかは、度外視して。

ドネルモ

イリジウム名義でやる場合と、77works名義でやる場合は、何かコンセプト的に違うんですか?

クサノ

イリジウムとしては、特にタカセが軸にあって、それにクサノが鎧をつける。77worksは、基本的に空気のように、他のものにまとわりついて、何かを形成するという形ですね。クサノの活動の中で、割と形がカチッとしたものの一つがイリジウムです。その他をとりあえず便宜的に77worksと呼んでます。

ドネルモ

プロジェクト的なものが77worksで、アーティスト・バンド的なものがイリジウムという形ですね。すると福岡の音楽業界ではかなり特殊なんですね。

東京を地方化する・福岡を中心化する

クサノ

特殊といえば、特殊だと思いますね。だからここまで来ると、「福岡にこだわる」という風な言い方は、多分おかしいと思うんです。

その上で、「東京にこだわらない」というやり方に、チャレンジしてみたいですね。「全国=東京」という位置づけにしてしまうと、なんだか分からなくなっちゃうことが必ずあります。だから感覚としては、「福岡から全国に行く」という感じですね。でも、それ(全国)は東京を指さない。

ドネルモ

東京を特別視しないし、福岡も特別視しない、ということですね。

クサノ

そうですね。ただ、自分にとっての真ん中は福岡!というのはあります。ホームタウンということですね。

ドネルモ

だけど「そこでしかやれない」というわけではなくて、いろんな所に出張っていくんですね。その全体の活動として、イリジウムや77worksがある。「福岡じゃなきゃダメ」ということは全然ない。

クサノ

どこでもそうですが、福岡で意固地になっても、良いことはないですから。逆に、東京の人が東京にこだわりがあるかというと、絶対そんなことはない。

ドネルモ

地方の人が東京のことをあまりにも特別視して、カリスマ的に見てるのかもしれません。その構図は変えた方がやりやすいだろうな、とは思います。

クサノ

その流れで言うと、劇団の「ギンギラ太陽’s」さん(*8が東京の公演を「地方公演」と言ってるのが、ものすごくカッコよく思えた、というのが個人的にあります。

地方公演の一つとして東京があって、本公演というか真ん中は福岡、というのはすごくアリな気がする。でも、誰もやってなかった新鮮なことで、そういうスタンスには憧(あこが)れますね。福岡まで来れないと見れないよ、というのは必要ない気もするんです。

ドネルモ

視点の変更ですね。一昔前までは、東京に対するコンプレックスが強すぎて、「福岡じゃなきゃダメなんだ」とか「福岡だからこそやれるんだ」という、ある種の特権意識みたいなものがあった。でも、そういう肩肘をはった、東京へのコンプレックスの裏返しとしての福岡の絶対視からもズレていかないと、全国的な運動として成立しにくいとも思います。

これはドネルモの活動理念とも、けっこう絡んでくるんですよね。前は福岡らしさ・福岡の固有性を見つけようと、福岡固有のアーティストにこだわっていた所があったかもしれない。でも最近は全然そうではない。同じようなことは熊本や広島、大阪でもやれるだろうけど、たまたま福岡という場所を活動拠点にしている。それこそ本拠地のような発想ですね。だから、どこに出張してもいい。

クサノ

京アニも「京都です!」というのを押し出してないからこそ、全然いけてるわけです。もう「京都」アニメーションではなくて、「京アニ」というものですよね。そういう空気になれればな、というように思うんです。「そういえば福岡だよね…。それで?」という感じで、どの地域でも普通に受け入れられる。そういう存在が一つできると、なんかいいよね、と。

ドネルモ

音楽業界もそうなっていけば……。

クサノ

そうなっていけば良いんですが……やっぱり情報とか戦略が東京に一極集中してるので、東京を特別視しないで日本各地を本格的にフラットに見るのは難しいんです、現状は。ただ、ゆくゆくはそうなるといいな、という気持ちはすごく大事な気がします。

ドネルモ

そうすると、東京を経由しない普遍化・全国化ということも、運動としてやっていけるのかもしれませんね。

未完成のものを育てる音楽風土

ドネルモ

最後にデルタポップやイリジウム関連の活動が代表的なものとしてあると思いますが、その方面の今後についてはいかがですか?

クサノ

そうですね。ただこれは痛し痒しなところです。やっぱり福岡では、どうしても既存のアニソンのカバー・コピー中心にプロジェクトが組まれています。そういう風土になってしまっているので、いまさらイリジウムが福岡で「オリジナルをバリバリやります!」と言って、従来の支持層に受け入れられるかというと、ちょっときついわけですよ。

だから、ちょっと福岡が遠回りになっている部分がある。逆に他の場所だと、オリジナルなものがウェルカムな面があります。

それでイリジウムが生き延びるためには、実は全国ツアーをしなければいけない。だから去年動いたツアーは、オプションじゃなかったんですよね。去年イリジウムが広島や大阪や熊本にライブに行ったりしたのは、「行かなくてもいいよ」というような選択肢じゃなくて、「行かないといけない」ものだったんです。そうじゃないと自分達の曲はやれなかったし、ユニットとしての格が上がらないと、アニソン系のイベントに出演する際に「あなた達はオリジナル曲も演奏OKですよ」という風に言ってもらえるわけがない。もし今の状態でオリジナル曲の演奏をゴリ押ししたら、イベンターさんに拒否されるか、もしくは、お客さんが何を聴きに来たのか分からないようになっちゃう。それも意味がないんです。

デルタポップでもやっぱりそうですよね。どうしてもアニソン・ゲーソンに縛られる。それ以外の曲は、いかにアニソンにマッチしそうな曲であっても、とりあえず(脇に)置いておく、というのが前提にある。その合意の下で動いているところに、近しい人間が例外を求めちゃうのはどうなのかな、という感じです。

ドネルモ

まだその時期でもないし、その場所でもない、ということですか?

クサノ

そうですね。なまじイリジウムが小さいというか、モノになってない時から、ずっとそこに関わってきてるので、突然今までの経緯から切り離して、「じゃあ今日から別枠で」というわけにはいかないですね。

もちろん外の人からは、「イリジウムはなんだかんだで活動してるはずなのに、福岡でライブをやってない」と言われるんですが……それはちょっときついんですよ。福岡でやるとなると、どうしても他の人の曲がメインになっちゃうから。それを自分の中で潔(いさぎよ)しとしてない部分があるんです。

もちろんそれも好きなんだけど、今のイリジウムでやることではないな、と。もしやるんだったら、他にアニソンバンドを組んでやります、というところですね。どうしてもコンセプト的にイリジウムとイベントがぶつかっちゃう部分があって、それをどういう風にクリアするかが常に問題ですね。

広島とか他の都市では、オリジナルの曲も割とフラットに受け入れられることが多いんですけど、福岡にはまだアニソン・ゲーソンの発展途上の曲を支持する余裕やら風土はあまり出来上がってないような気がします。逆に、すでに成功しているコンテンツに対して、ワッと行くエネルギーはすごくあるんですよ。

ドネルモ

コピーバンド的に完成されたものを受け入れる土壌はあっても、イリジウムブランドとしてオリジナル曲をやる時に、まだ障害のようなものがあるんですね。

クサノ

同人に例えるならば、それこそオリジナル同人(作品)ですから、その土地の人々がその点を楽しんでくれるか・くれないかは、その同人・アマチュアレベルから先のレベルまですごく関わってくる。既に出来上がったものに対する再生産しかなくなっちゃったら、その先は難しいですからね。もちろん趣味として面白いことは、間違いないんですが。

ドネルモ

広島や熊本、大阪のライブはどういう感じなんですか?

クサノ

これが盛り上がるんですよ(笑)。オリジナルをやっても。悔しいけど、イリジウムのオリジナル曲に関しては、福岡は比較的盛り上がりにくい。……手放しで「福岡が好き」と言ったら語弊があって、(本当は)愛憎が入り交っている。でも(やっぱり)福岡が好き、というモヤッとしたところが自分にはあるので。

ドネルモ

どういう部分を気に入られてます?

クサノ

好きな部分はキリがないですけど、もうちょっと良くなってくれると嬉しい点は、テンプレ以外のものに対して、どれだけ受け入れてくれるか、というところですね。

もちろん、アニソン自体が映像・世界観と一体となっていて、ワッと盛り上がれる部分が確実にあるから、しょうがないと言えばしょうがないですけどね。自分達の曲が、いかに他と遜色なかろうが、盛り上がれるだけのバックグラウンドがないですからね。

ドネルモ

そうですね。やっぱり知っている映像が流れたり、キャラクターと一体化したような音楽は、受けがいいだろうし。

そうすると、それに匹敵するというか、また別枠で楽しんでもらえるような曲を作るのが、今後の課題なわけですか?

クサノ

そうなんですよね…。だから、とりあえずそこにたどり着くまでは精進しないとなぁ、と。

ドネルモ

ただ福岡には、地元という前提からくる受けにくさがあるわけですね。

クサノ

ありますね。他の所では、ゲストという肩書きで入って行けますから。逆に福岡ではみんな知った顔なので、横並びになるのがやっぱりスジなわけです。

ドネルモ

多分ですが、大阪や広島で紹介する時に「福岡から来ました!」というと、一種の黒船というか、東京から来たのと似たような感覚が働くのかもしれませんね。そういう良い意味でのよそ者的扱いを受けるからこそ、受け入れられるのかもしれないですね。

これはすごく課題があるみたいですが、そこを乗り越えられれば、福岡でもできる面白さができそうですね…。でも『戦極姫』などでだいぶん評価されて、あと一歩という感じですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このインタビュー後(6/9)、福岡のロックバンド「岸田教団with明星ロケッツ」がアニソンタイアップでメジャーデビューを発表した。ただし“ゲーム音楽”ではなく、アニメソング分野でのデビュー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(*8)「ギンギラ太陽’s」

福岡市を拠点に活動する劇団。大塚ムネト主宰で1997年に旗揚げ。地元のビルや電車を擬人化したかぶりものを使って、福岡の歴史や地域の話題などをテーマに、綿密な取材と笑いや感動を取り入れた演出により好評を博している。地元の話題をテーマにしつつも、普遍性を備えた演劇として、東京等にも「地方」公演を行っている。

(公式HP:http://www.gingira.com/

ギンギラ太陽's 天神経済新聞(2008・10・2).jpg

ギンギラ太陽's・舞台風景(「天神経済新聞」2008年10月2日付記事)

 


 

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「イリジウム」が福岡で目指すもの

クサノ

あと一歩なんですよ。まだゲームじゃ弱いのか、と。アニメを狙わないと。できたら地上波か、と(笑)。

ドネルモ

地上波ですね~(笑)。本当に『ストライクウィッチーズ』とか、それに類するものとか。

クサノ

まずはそこまでが、僕にとってのフラグの位置なんです。「ゲームソング取れてよかったね」じゃない。

ドネルモ

活動としてもそうだし、直接的だけど経済規模としても、もう一踏ん張りという感じですね?

クサノ

そうなんです。またゲーム・アニメだけに限っても、上限が見えちゃうところがあるから、バランス感覚がまた難しいんですよね。「ゲーム・アニメ方面に完全にシフトしてしまってもいいのか?」というと、そうじゃない気もする。

ちょうど真ん中でおいしい位置というのは、「T.M.Revolution」(*9)とかですよね。J-POP関連とアニソン関連の真ん中にいて、双方からたまに「お前こっちじゃないじゃん!」ってツッコミもあるけど、基本そこにウェルカムでいられる。ミュージックステーションに呼ばれるかどうかが境ですね(笑)。

ドネルモ

(笑)そうすると、大体今後の活動予定も見えてきましたか?

クサノ

そうですね。今年中には、ちゃんとオリジナルのアルバムを出して、「それがどれくらい行けるのかしら?」というのは、個人的にもすごく楽しみにしているところですね。今はまだシングルか3曲・4曲入りのもので、手売りしかしてないですから。それも『戦極姫』以前に出してたもので。

もちろんオリジナルと言っても、『戦極姫』の曲とかと完全に別物として切り離すのではなくて、何かしらのリンケージ(接続)を作ってみようかなあ、とは思うんですけれど。またそれから後が問題ですよね。

ドネルモ

なるほど。バンド活動とBGM制作の比率というのは、どういう感じで予定されてますか。

クサノ

作品数で言えば、BGMになりますね。でもやっぱり作品の後に2次的・3次的に頼まれるのは、歌モノ・バンド活動の方ですね。

夢は、いつか自分達のカヴァーやコピーを誰かにやってもらいたいですね。まったく自分達の知らないところで演奏されて、「なんで東北の人達が『火群』を弾いてるの?」みたいな(笑)。

後に続く人達が出てきたら、本当に自分の位置が分かるんですよ。今は良くも悪くも、ひとり旅なので。

ドネルモ

なるほど。フォロワーが出て来ることで、初めて分かることがあるんですね。

クサノ

後は小さい目標として、早く「ニコニコ大百科」にイリジウムが載らないかな、とか(笑)。

ドネルモ

(笑)ウィキペディアとかもですね。

広島や大阪に行ったのは、『戦極姫』関係からですか?

クサノ

広島は、『戦極姫』とかで知名度もちょっとある、ということで、向こうのイベントのプロモーターさんが目をかけてくれて、「ちょっと来ませんか?」というふうに、声をかけてくださいました。

で、大阪は、長く続いているアニソンのイベントだったんですよね。「NijiRock」というもので、「虹」と二次創作の「二次」とフジロックをかけてるんです。それが30回ほどあって、盛り上がってそうだったので、「ぜひ出してくれ」と自分達からオファーをかけました。だから、そこではゲストじゃなくて、普通のバンドさんと同じ枠で出てきました。

ドネルモ

そこで認知されるというのは、大きいことですよね。

クサノ

そうですね。その効果かどうかは分からないけど、『戦極姫2』の主題歌が入ったプロモーションは、大阪で配られました。

ドネルモ

日本橋とかでですか?

クサノ

これがまた、ソフマップの梅田店なんです。そこの限定で配られました。持ってきましたよ(と限定版を取り出す)。

ドネルモ

これは作るだけでも大変じゃないですか?

クサノ

CD-Rに焼いてあるみたいですね。でも、ちゃんとレーベル面もつけてくれてるし。これはありがたいな、と。

作品自体も、自分が関わってなかったとしても、やっぱり「お!」と気になるようなものにできている、と思うんですよ。内容まで触ってないのもあるけど、面白そうに見えるのは間違いないです。

ドネルモ

僕もかなり気になりました。『恋姫』のような感じで。『戦極姫』がアニメ化する可能性もあるかも知れないですね。

クサノ

できれば地上波、「ノイタミナ」枠で(笑)。

『恋姫』と言えば、片霧烈火さん(*10)には負けたくないですね。はやく並べてもらうところまで行かないとなーと、勝手にライバル視してます。もっと言うと、札幌に「I’ve」(*11)があるような感じで、福岡で音楽の制作をある程度引き受けて、名が通った活動ができる音楽制作チームを作りたいですね。

(福岡には)ゲーム会社もたくさんあるんです。ただ音楽制作チームを自前で持たれている会社さんも多いので、その辺との兼ね合いですね。

ドネルモ

やっぱり制作チームは全国から集まってくるんですか?

クサノ

そういう場合もあるし、たまたま福岡にいて知っていたということもあるようです。

ドネルモ

ただ、なかなか名前は表に出てこないですよね。

クサノ

そうですね。裏方さんで、制作に追われてしまって、外にアピールするどころではないですからね。

ドネルモ

惜しいですよね。その曲が全国に流れていって、いろんな人が聴くわけだから。

クサノ

『.hack』(*12)の音楽とか、かなり沢山の方が聴いているはずなんですけどね……もったいない。

ドネルモ

それが表に出ない、というのも不思議な話ですね。

終わりに~再び職人的・デザイン的な作品作りについて~

ドネルモ

最後になったんですが、イリジウムという名前は、どういう経緯でつけられたんですか?

クサノ

最初にコンセプトにあったのが、2人ともアニメが好きということと、僕が特にSF設定が好きだったので、ちょっと未来的なものにしたかった、ということがあります。元々ヘヴィメタル畑ということで、金属の名前で自分達のルーツをメタファーにするのはおいしいぞ、ということもありました。

付け加えると、長い名前をつけて、それが4文字あたりに略されると納得いかないな、と思って、「略されない範囲で一番長い名前を付けてみよう」と考えた時に、5文字だったんです。それで5文字で「パラジウム」とかを当てはめていって、結局「イリジウム」に落ち着いたんです。決め手はなんだったかと言うと、イリジウムの元素番号が「77」ですごく並びがよかったからなんです。

後はイリジウムという名前の由来があります。元々は虹の女神で「イーリス(アイリス)」なんです。イリジウムの化合物が色々な性質を持つらしく、いろんなモノと交わることで、すごい性能を発揮する。色(性質)も変われば、名前も変わる。それが音楽ジャンル的な核を持たない、節操のない自分達にはピッタリなんじゃないか、という点がありました。

だからイリジウムは特定のカラーを付けてなくて、ロゴも「CDの後ろの盤面をイメージしてください」と言って作ってもらってるんですよ。プリズム的で、玉虫色。「あいまいな日本の私」なわけです(笑)。

だから「イリジウムって、どんなバンド?」と聞かれると、逆に言葉に詰まっちゃって、セールスの利点にできない、というジレンマを抱えることにもなるんですけど。

ドネルモ

でも、すぐれてデザイン的なコンセプトですよね。いろんなコンテクスト、大きく言えば生活や世界、社会のコンテクストに合わせていく。その中で音楽という製品を出力していく。それはアーティスト的な特質ではなくて、職人的に「何でもやれます」という感じに思えます。

クサノ

「こだわりのある職人さん」くらいの位置にいたい、という感じですかね。

ドネルモ

仕事を選ばず、どんな曲・作風でも合わせていく、それこそイリジウム。

クサノ

いつか真ん中は定まるものだ、と思うんですよ。「山寺宏一(*13)ってどんな声?」と言われた時の真ん中は、多分何年か経たないと出来上がらなかったものだろうし。

ドネルモ

色々と出力していった結果として、「多分この辺じゃないかな」と仮説的に見えてくる感じですね。最初からコンセプト・理念があるわけではなくて。そこは「これだ!」と言えない、ジレンマでもあるんですね。

クサノ

でも、そこは譲れないところでもありますね。

ドネルモ

なるほど。今日は本当に色々なお話を聞けました。本当にありがとうございました。

クサノ

こちらこそ、たくさん話させていただいて、ありがとうございました。

(本編終わり)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(*9)「T.M.Revolution」

西川貴教の音楽プロジェクトの名称。1995年の活動開始以来、ロック音楽を中心に活動を展開したが、2002年の『ガンダムSEED』のオープニングテーマ曲をきっかけにアニメ音楽界にも活動を広げ、J-POPとアニメ・ゲームソングの双方で人気を博している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(*10)片霧烈火

女性のシンガーソングライター。美少女ゲームへの音楽提供が多数ある。アニメ『ひぐらしのなく頃に』ではED曲のボーカルも務めた。

(*11)「I’ve」

札幌市に本拠を持つ音楽制作チーム。地方発のアニメ・ゲーム音楽制作グループとして代表的な存在。1998年の活動開始以来、テレビアニメ、美少女ゲームの音楽制作で評価を得たほか、CMや映画への曲の提供やCDアルバムの発表など、活動は多岐にわたる。KOTOKOや川田まみなど、所属ボーカリストが次々にメジャーデビューして全国的にも知られ、2005年の日本武道館ライブでは7500人の観客動員を記録した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*12)『.hack』シリーズ

バンダイナムコから発売されているテレビゲームソフト・シリーズ。福岡市博多区のゲーム制作会社「サイバーコネクトツー」が開発元。

(サイバーコネクトツー・HP:http://www.cc2.co.jp/

ゲームシリーズ最新作『.hack//link』HP:http://www.cc2.co.jp/hack_link/index.html

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(*13)山寺宏一

声優・タレント・俳優。1961年生まれ。専業の声優としてキャリアを始めたが、子供向けバラエティ番組「おはスタ」(1997年)の司会で人気となり、三谷幸喜から俳優出演をオファーされるなど多方面で活躍。

声質が非常に広く、演技も多彩なため、二枚目から悪役、お笑いまであらゆるキャラクターをこなす。「七色の声を持つ男」とも呼ばれ、アニメ監督・押井守から「彼の最大の不幸は、誰も彼の本当の声を知らないことである」と評されたとされる。

テレビ番組『プロキング』(フジテレビ、2007年10月放送)

「現役声優が選ぶNo.1声優ベスト10」1位獲得時の映像

 

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・連載を終えて

足かけ半年になった連載も、今回でひとまず完結です。インタビューから半年を経る中で、クサノさんの活動は様々な広がり・展開を見せています。しかし、インタビュー当時にうかがったお話は、たぶんに現在の活動につながるものだった、と振り返って思います。

例えばタカセさん・山元さんらとの話し合い・協働しながらの作品作りや、完全に上京するのではなく、地方都市を拠点に全国へと活動・発表の場を広げていくためのアイデア・方法など、地方からコンテンツを発信していくときの様々なヒントをうかがえたように思います。これからも福岡発の音楽活動の可能性を模索されるクサノさんの活動はとても興味深いです。

クサノさんは東京に行くことにもこだわらないが、福岡という拠点にもこだわりすぎず、熊本・長崎・広島・岡山・大阪など他の都市と積極的に活動をリンクしようとされています。その目標は、それぞれの人や場所に合った作品・演奏を実践したうえで、今の活動拠点(福岡)でできることの可能性を広げ、新しい音楽のネットワークを作り出すことのように思えます。それは、まず福岡でできる文化的営みを考え、実行して、それに関わる人々のネットワークを徐々に他の都市へも広げていくドネルモの活動と、どこか共鳴する点があるのかもしれません。

最後に記事の掲載が大変遅れてしまったことを、皆様におわびいたします。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(文責:笹野正和)

・連載を終えて
足かけ半年になった連載も、今回でひとまず完結いたします。インタビューから半年を経る中で、クサノさんの活動は様々な広がり・展開を見せています。しかし、インタビュー当時にうかがったお話は、たぶんに現在の活動につながるものだった、と振り返って思います。
例えばタカセさん・山元さんらとの話し合い・協働しながらの作品作りや、完全に上京するのではなく、地方都市を拠点に全国へと活動・発表の場を広げていくためのアイデア・方法など、地方からコンテンツを発信していくときの様々なヒントをうかがえたように思います。これからも福岡発の音楽活動の可能性を模索されるクサノさんの活動から目を離せません。
最後に記事の掲載が大変遅れてしまったことを、皆様におわびいたします。最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。

10/09/04 18:56 | コメント(0) | トラックバック(0) このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーのはてなブックマーク数 Buzzurlへ追加このエントリーのBuzzurlブックマーク数 livedoorクリップへ追加このエントリーのlivedoorクリップ数 Yahoo!ブックマークへ追加人が登録 POOKMARK Airlinesへ追加 Saafへ追加 ニフティクリップへ追加 add to del.icio.us add to Digg add to Reddit

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