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【新春企画】「わたしの2011年たち」 〜古賀琢磨さんのばあい〜


テキスト:古賀琢磨
構成:宮田智史

新春企画「わたしの2011年たち」

ドネルモHP新春企画「わたしの2011年たち」と題しました本連載特集は、ドネルモのスタッフやゆかりのある方々に2011年を振り返ってもらおうというものです。

2011年は例年にも増して、様々なことが起こった年でした。震災や原発、オウム裁判の終結、地デジからなでしこW杯優勝、まどかマギカまで、本当にたくさんのことがおきました。

そんな1年だったからこそ、普段の生活でどんなものに出会い、感動したり、怒ったり、楽しんだりしたのかを、とりわけ極私的で独断と偏見に満ちた視点で、2011年に出会った作品や出来事を通じて紹介していきたいと思います!トップバッターは、ドネルモスタッフの古賀琢磨が今年本格的にスタートしたSNS・Google+について語り倒します。それではどうぞ〜

 

 

Google+と生産の夢

2011年6月にGoole+というSNS(*1) が公開された。「サークル」と呼ばれるタグ機能でフォロー(*2)を管理し、自分の投稿するメッセージの公開先をコントロールできるwebサービスである。

まず一枚の絵を紹介したい。ユーザーの一人であるRyusuke I さんが7月に公開したこの絵はGoogle+というSNSを的確に説明している。

 

 

 (*1)
ソーシャル・ネットワーク・サービスの略称。広義には人と人とのつながりを作るサービスやウェブサイトを、狭義には、このつながりを促進、サポートするサービスを指すと言われる。代表的なサービスとしてGREE、mixi、facebook、Myspaceなどがあげられる。

(*2)
フォロー:他のユーザーの投稿を自分のストリーム(時系列上に投稿を表示する画面のこと)で表示できるように、ユーザーを登録すること

 

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Google+図1.jpg

                                                             《Ryusuke I さんが7月に公開したGoogle+を的確に描いた絵》   

 

色とりどりの線が、他の線と絡まりあいながら彩りを変え一羽の鶏を描き出している(*3)。これは一つのサービスが一つの機能を持っているのではなく、複数のサービスの組み合わせで様々な側面を見せるこのSNSと相似している(*4)。Google+は利用者に企画会議を行うことも、一緒に絵を描きながら会話することもワークショップを行うことも可能にしてくれる(*5)。

 

参照図.jpg
  《図1.Googleが自ら提供するサービスを表した公式のイメージ図》


この絵はユーザーたちを表現していると見ることもできる。彼らは様々なサービスを用いた交流の中で様々な色に変わっていく。刺激を受け、指摘され、誰かの書いた何気ない投稿にはたと気づき、変わろうとしていく。その変色はたった一回のものではなく、交流の度に起こる。そうして変わりゆく人々が他の変わりゆく人々に魅せられて更に交流へと促されていく。この絵自体も下書きから制作過程をリアルタイムでpostされたもので、他のユーザーからの感想を貰って描かれたものでもある(*6)。

何本もの描線によって構成された鶏は、移ろいゆき複数の顔を持った個人の集まりの場をも表現している。

(*3)

この絵と同様にGoogleは、自らの提供する様々なサービスがそこに集約されていることを様々な色の矢印で示す絵(図1参照)を提示している。この虹を思わせるような色はGoogle+をモチーフとした絵では度々用いられているものでもある。

 

(*4)

一つの事例としてビデオチャット機能を上げてみよう。これは、PC画面の共有、ドキュメントの共有などの機能を追加することができる。私たちはこれを利用して絵を描いて見せる、文章を書く、会話する、といった複数のコミュニケーションを私たちは同時に行うことができる。その組み合わせ方によって楽しみ方は変わってくるのである。その度ごとにそれぞれのサービスは全く違うサービスになっていると言ってよいだろう。

 

(*5)

例えば、蝦名正行さんはビデオチャットを利用して、ニードルフェルトの作り方を実演し、作品へのリクエストを受け付けたりもしている。こうした実演は継続的に行われており、第二回では実際の作品の画像を上げ「どのような作品を作るのか」といったことも提示している。

 

(*6)

SNSという手段を用いながら絵を発表することの意義は非常に重要だという。本記事の画像使用許可をとるにあたり、Ryusuke Iさんから「g+でお絵描きがこんなに盛んになったのはリアルタイム性が大きいと思うんですよね。あ、みんな描いてる!おれも描かなきゃ!みたいな。あとは絵を描いてる人にとって作品をリアルタイムで感想もらえるって嬉しいことなんです」という指摘を頂いた。ただ絵を描く場がある、ということだけではなく、まさに今絵を書いているということが重要になってくる。Google+はこれを可能にする空間を準備している。また、この絵はアナログで描かれたものだが、筆者の知る限り、アナログ描きで下書きから順にリアルタイムで多くの人々に向けて投稿しながら描かれたものはGoogle+の日本のユーザーでは初めてではないかと思われる。

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Google+では「コミュニティ」と呼べるような機能がないと指摘されていたが(*7)、持続的な集団形成の困難さが欠点ではないことを示唆する一つのプロジェクトが存在する。

それは『Google+のお絵描きさん本 ~Google+'s drawing book~』(*8)という同人誌 (*9)(図2)である。これは、ユーザーの一人であるこんのゆみさんが取りまとめ役となり、Google+上で普段から自分の描いた絵を発表している20名のユーザーによって制作されたフルカラーイラスト本である。表紙は、なべのゆきこさんによるGoogle+の擬人化キャラクター(*10)であり、凱神命月さんのデザインによるものである。

Google+図2.jpg

《『Google+のお絵描きさん本 ~Google+'s drawing book~』という同人誌(図2)》   

これはもともとの知り合い同士によるものではないし、逆に単に絵を描ける者がただ募集に応じただけで出来上がったわけではない。日頃からGoogle+のサービスによって様々な側面を見せるユーザー同士が惹きつけられあい、コミュニケーションに参入していきながらこの作品は創りだされたのである(*11)。こうして生み出された同人誌は現在でもGoogle+ページ「Google+のお絵描きさん本。」にて情報発信、通信販売が継続されている。

この同人誌プロジェクトは作品が頒布される過程を可視化することによって、私たちの生産に必要なのは技術を拠出し合う一時的なアソシエーション(*12)でしかないことを思い出させてくれている(*13)。その萌芽は他の領域でも現れつつある(*14)。このプラットフォームの利用者たちは旧来の生産関係が必要としてきた束縛から抜け出し、生産のための組織をその都度作り出し、私たちがインターネットに見た夢をもう一度見せてくれている。それは「私たちは空間の共存や企業体という体裁を持たずに生産が行えるのではないか」という夢である。

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著者紹介

古賀 琢磨 (ドネルモ・ディレクター)

九州大学大学院比較社会文化学府日本社会文化専攻博士課程所属。専門は文化社会学という名目で、おたく研究と称する無為の日々を過ごしている。Google+に眩暈され「Google+廃人 」としての半年間が過ぎたが、後悔はしていない。それは小人が閑居していたにもかかわらず不善を為すことがなかったということにとどまらず、人とコミュニケーションすることの楽しさを思い出しつつあるからである。心が引きこもりがちの30歳。

 

古賀琢磨さんじゃない人の2011年たち

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古賀徹さんの場合
南知里さんの場合
山内泰さんの場合
園田寿子さんの場合
牛島光さんの場合

 

(*7)

当時、企業やNPO法人が運営するための「Google+ページ」というサービスは、あくまで一人のアカウントに紐付されたものであり集団が継続的に管理することは想定されていなかった。共同して何かを作り出す集団を形成することには不向きなSNSだったと言えるだろう。なお、2011年12月19日のアップデートにより、Google+ページは50名の管理人によって運営することが可能になっている。

 

(*8)

12月13日、Googleの副社長Bradley Horowitzが利用者たちによるこのプロジェクトとプロジェクトチームの「自己組織化」を高く評価しているというニュースがウェブ上を飛び交った。なお、Breadly Horowizによる発言を参照


(*9)

同人誌:同好の士(同人)が資金と技術を提供しあいながら制作する雑誌のこと。近年、まんが、アニメ、ゲームのファンが制作する二次創作作品(fanzineとも言われるがDoujin-shiという言葉自体が流通している)として知られている。現在でも本作のような特定の物語に依拠しない(単純に二次創作とは呼べない)同人誌も決して少なくない。

 

(*10)

なお、現在なべのゆきこさんのGoogle+上での「投稿からの画像」の履歴やサイト「めまして!」での同人誌に参加した旨での投稿から同人誌の表紙となった画像が出来上がる過程を見ることができる。Google+からは絵師を励ますコメントなどが他のユーザーから寄せられていることが確認できるだろう。彼らの中には日頃から社会に対しての厳しい批判を主張している者もいれば、言葉遊びで他の人達を面白がらせている者もいる。

 

(*11)

そもそもこの同人誌自体、彼らの遊びの一つといえる。例えば、夜な夜な一つの共通したテーマでそれぞれに絵を描くといった遊びの延長線上にある。

 

(*12)

アソシエーション:特定の関心を追求し、一定の目的を達成するために作られる社会組織のこと。R.M.マッキーバーは地縁・血縁に基づく集団であるコミュニティの対義語として用いている。一般的には企業やNPO法人などを指すが、ここでは、これらの組織のように事業の継続性は必ずしも含意する必要のないものとして用いている。生産のための組織は、しがらみや目的を見失った慣習を維持し続けてしまい組織のための生産の場へと変貌しがちである。

 

(*13)

Google+で新たに仲間を作り、Googleグループで様々なデータを共有し、PicasaやYoutubeで発表し、彼らの生産物の購入者たちはGoogleウォレットで精算することが可能になっていくだろう。このとき集団は継続的な会社のような組織でも、地縁血縁に基づく集団である必要性もない。私たちは生産に必要であるのか不明瞭なしがらみ、それによって導入される諸々のマネジメントといったコストから解放されうる。この事態は同時にこれからのマネジメントがマネジメント自体のコストを削減することを求められていることを暗示している。

 

(*14)

情報技術に携わるユーザーたちは既に情報交換しながらGoogle+に関連する多くの拡張機能などを作り出し、バージョンアップも果たしている。これらの活動は現在のところ経済的なリターンを得にくい環境であるが、一方で、経済的なインセンティブのある社会を作り出すことが出来れば、私たちが持ちうる情報技術は格段な進歩を成し遂げるだろう。

 

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12/01/01 15:02 | コメント(0) | トラックバック(0) このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーのはてなブックマーク数 Buzzurlへ追加このエントリーのBuzzurlブックマーク数 livedoorクリップへ追加このエントリーのlivedoorクリップ数 Yahoo!ブックマークへ追加人が登録 POOKMARK Airlinesへ追加 Saafへ追加 ニフティクリップへ追加 add to del.icio.us add to Digg add to Reddit

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