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【新春企画】「わたしの2011年たち」 〜園田寿子さんのばあい〜


テキスト:園田寿子
構成:宮田智史

 

新春企画「わたしの2011年たち」

ドネルモHP新春企画「わたしの2011年たち」と題しました本連載特集は、ドネルモのスタッフやゆかりのある方々に2011年を振り返ってもらおうというものです。

2011年は例年にも増して、様々なことが起こった年でした。震災や原発、オウム裁判の終結、地デジからなでしこW杯優勝、まどかマギカまで、本当にたくさんのことがおきました。

そんな1年だったからこそ、普段の生活でどんなものに出会い、感動したり、怒ったり、楽しんだりしたのかを、とりわけ極私的で独断と偏見に満ちた視点で、2011年に出会った作品や出来事を通じて紹介していきたいと思います!

第7回目は、園田寿子さんの「私の2011年」はアニメ『輪るピングドラム』です!それではどうぞご覧下さい。

 

『輪るピングドラム』について

 

文学、映画、演劇など様々な物語表現に関心がある人にとって面白いと思えるアニメは、多くはない。2011年のアニメ作品の中で最も文学的な作品だと感じたのは『輪るピングドラム』(*1)だった。地下鉄サリン事件、神戸連続児童殺傷事件、震災などのモチーフが出てくるので賛否両論を呼んだし、難解に感じた人も多いと思う(時間軸の入れ替えやメタファー、意図的に誤読させる展開が頻出し、一見わかりにくい)。しかしそれらは、あくまで枝葉の部分であり、テーマとしては然程難解なものではなかったと思う。

序盤は「一方的な恋」がコミカル&シュールに描かれる。ストーカー、魔術など女の子達は手段を選ばず暴走する。女の子というのは、まだ恋に不慣れな若いうちは、相手に対し一方的になりがちだと思う。加えて今の時代、自己中心的な人が少なくないので、それに対するアイロニーなのかもしれない。

終盤は「真の愛」が描かれる。自己犠牲を厭わない、無償の愛こそが「愛」なのだ。

〈君は命をかけて、大切に想う女を救えるのか—?〉

この結末は草食系男子・脆弱なオタク系男子批判でもある。実際、そういう成熟した段階にある感情に対してピンと来ない男性達にとって、この作品は不評だったようだ。

そして、愛とは恋愛のみでは無い。ヒロイン・陽毬は命を取り戻すが、それは友人たちの存在なしには成立しなかった。幼いの頃の友人たちが決して裏切らなかったというのは、大変感動的なエピソードだった。

また、一番重点を置いているテーマは「家族」だそうなので(監督談)、「家族愛」の物語と言える。良い事も悪い事も分かち合うのが家族。子どもは親を選べないという残酷な事実を炙り出している。離婚、育児放棄、虐待、完璧主義ゆえの我が子への全否定、犯罪者の親…家族における「呪い」の側面を徹底的に扱っている。

では、自分や他者の不幸を正当化するために、親や社会を否定する事が結論だったのかというと、全く違う。この物語は「絶望」「破壊」「世界の否定」を象徴する美青年・眞悧と、「希望」「救済」「世界の肯定」を象徴する少女・桃果との対立も軸だったと思う。

博愛的な桃果と違い、恋愛のゲーム的側面や性愛でしか愛を語れない眞悧は、ある意味可哀想な人だが、二人の勝負は桃果の勝利ということで終幕を迎える。眞悧は桃果に惹かれているからこそ、嫉妬し、攻撃する歪んだ性格だけれど、流石に暴力や殺人を正当化する人間は、博愛主義者にも神にも見放されるのが当然だ。私は眞悧に何もかも似ている人を知っているので、眞悧のシーンにはゾッとしてしまう。アニメでありながら、とてもリアリティのある作品だと感じた。

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著者紹介

園田寿子

1985年2月15日生まれ 水瓶座、O型。動物占いはペガサス。心と体、知性と感性、論理と感情、何事もバランス感を大事にしている26歳。大学時代は文芸創作評論専攻で、文学、思想、諸芸術、メディア論、ジャーナリズムなどを学ぶ。社会人になってからは、企画、編集・ライティング、制作などの仕事をしている。

園田寿子さんじゃない人の2011年たち

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『輪るピングドラム』OP

 

(*1)『輪るピングドラム』

『少女革命ウテナ』を手掛けた幾原邦彦が「家族」をテーマに監督・脚本を担当するオリジナル・アニメ作品(2011)。全24話。記号的表現で場面転換に用いられる自動改札機や発車標、加えて、無個性なピクトグラムの形で作画されるモブキャラクターが、独特の作風として描き出されている。また、リンゴとペンギンが、多彩な表現によって様々なシーンで描写されている。作中では、『銀河鉄道の夜』がしばしば引用される。なお、アニメは平成23年度(第15回)文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品アニメーション部門/長編(劇場公開・テレビアニメ・OVA)に選ばれている

 

あらすじ

双子の兄弟である高倉冠葉と高倉晶馬の妹の陽毬は、病気によって余命わずかとなっていた。兄弟は妹の願いに応え、自分たちにとって想い出の場所である水族館へと出かけるが、そこで陽毬は倒れ、搬送先の病院で息絶えてしまう。覚悟していたこととは言え、ただ悲嘆に暮れるばかりの兄弟だったが、彼らの目の前で突然、水族館で買ったペンギン型の帽子を被った姿で「生存戦略!」の掛け声と共に陽毬は蘇生した。ペンギン帽子を被っている間に限っては、陽毬であって陽毬でなく、別人格「プリンセス・オブ・ザ・クリスタル」に変わるという状態になっていた。そしてプリンセスは、陽毬を助けたければ、ピングドラムを手に入れろと兄弟に命じる。彼らに添い従う3羽のペンギンを与えられた兄弟は、プリンセスからの指令で女子高校生・荻野目苹果の調査を開始するが、それは過去にも繋がるTSM荻窪線沿線で起きる様々な事件の始まりとなった。

 


 

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12/01/07 02:29 | コメント(0) | トラックバック(0) このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーのはてなブックマーク数 Buzzurlへ追加このエントリーのBuzzurlブックマーク数 livedoorクリップへ追加このエントリーのlivedoorクリップ数 Yahoo!ブックマークへ追加人が登録 POOKMARK Airlinesへ追加 Saafへ追加 ニフティクリップへ追加 add to del.icio.us add to Digg add to Reddit

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