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2012年ドネルモの抱負 ‐ For a change, Proud to live here


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福岡でドネルモをやっていく上で、影響を受けてきたものがいくつかある。よくお話させていただくニコニコ動画やAKB48のしくみもそれらのひとつ。ここでは、昨年大きな感銘を受けた映像の話から始めたい。

九州新幹線のCMと《地域》のイメージ

それは、九州新幹線全線開業のCMだ。開通予定日が震災の翌日だったために幻のCMと言われつつも、youtubeなどインターネット上で話題となり、ついにはカンヌ国際広告賞で金賞を受賞した。震災で心を痛める人が多い中、「九州がひとつにつながる」とのメッセージが、国内外を問わず、多くの人に感銘を与えたのかもしれない。

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だが僕がこのCMを素敵だと思う点は、そこではない。むしろ九州は、人々は、こんなにも均質で、それでいてばらばらで、カラフルな力に満ちていることに、強く感銘を覚えたのだ。

CMでは、鹿児島も熊本も福岡も、どこも似たようなものに見える。キャプションなしには、田舎か街の違いくらいで、そこがどこだかわからないだろう。九州にいま住んでいる人々は、かくも均質的なのである。

それは残念なことだろうか。とんでもない。人それぞれに、あんなに活き活きと、個性的なのだから。所定の場所のみならず、映像に映りたい人々が、思いもよらないところではしゃいでいて、そんな無邪気な振舞いを、「あそこにも、ここにも!」とカメラが驚きをもって捉えている。だからだろう、CM映像は愉悦に満ちていて、そこに人が住んでいること、それ自体を祝福するかのようだ。

九州新幹線全線開業のCM

このCM撮影には興味深い裏話がある。CMの制作事務局にいた方にお話を伺ったところ、当初は所定の場所に人を集めて、そこを新幹線から撮る予定だったとか。ところが募集を開始してみると、「別の場所からでも映りますか?」との問い合わせが殺到、映りそうな場所を人々が勝手に探し始めたらしい。

制作者の意図どおりに所定の場所の人が集っているのをただ撮る映像だったら、ひどく凡庸なものになっただろう。同時期に放映されたJR博多シティのCMがそうだったように。

ちなみにレインボーカラーは九州7県のシンボルだとか。欧米から見たら、セクシャルマイノリティーのパレード(6色)に見えるのかもしれない。

 

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素敵だな、とドネルモが思うのは、こうした《地域》のイメージだ。どこも似たような場所だけれど、そこに住む人々が、生活を面白く充実させようとして、それぞれの仕方で創意工夫を凝らしている。

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ソンミサン・マウルのこと

そんな地域が実際にある。昨年末に訪れた韓国ソウル市のソンミサン・マウル(村)だ。なんてことない閑静な住宅街だが、ここでは、住民の「あったらいいな」に応えるかたちで、生協、夕食の配達、カフェ、フリースクール、劇場、本屋的なサービスなどが、そこに住む人々のコミュニティから、次々と生まれている。

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《コミュニティカフェ「小さな木」》

 ソンミサン・マウルという観光地があるわけではなく、そもそも行政区ですらない。ソンミサンとは小高い丘の名前で、その周辺に住む人々の営みとしくみが、マウル(村)と呼ばれ始めたのだ。僕が取材に行った日も、韓国の他の地域から視察団が訪れていた。住んでみたい地域としてソンミサンが人気なのだという。

ソンミサンでお話を聞いてみた。住んでいる人が、「あったらいいな」と思うサービスをお互いに相談したり、3000円くらいから出資して具体化するしくみが出来ているらしい。地域の歴史や伝統といったご当地自慢の話はなかった。自分たちの外部に地域を権威付ける何かを求めるのではなく、自分たちの営みのうちに地域性を育む意識が浸透しているのだと思う。

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《出資者の名前が刻まれたプレート》

そんな地域性を醸成するしくみづくりに、2012年のドネルモは、小規模ながら着実に取り組んでいく。そこで、この問題に取り組む上でのコンセプトを、《たまたまここにいる人》の生存戦略としたい。



ソンミサン・マウル

ドネルモによる取材記事は、後日掲載予定。日本にソンミサン・マウルを紹介したエンパブリックによるまとめはこちら。

http://empublic.jp/books/sungmisan/about.html

株式会社エンパブリックNPO法人日本希望製作所によるソンミサン・マウルの本が販売もされているが、一般に流通していない。上記リンク先から購入できる。

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《『まちの起業がどんどん生まれるコミュニティ〜ソンミサン・マウルの実践に学ぶ』》

 


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《「小さな木」で働くチチさんと代表・山内》

 


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《フリースクール(代案学校)》

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《たまたまここにいる人》の生存戦略

福岡で様々な活動を見ていてつくづく思うが、既存の地域性を愛せる人は幸せだ。だが、そこまで愛せない人々も、少なからずいる。「嫌なら別の場所に行けばいい」と怒られそうだが、別に嫌なわけではない。ただそう簡単に、人は住む場所を選べないのだ。

この問題は、震災後の東北の話を見聞きする度、ますますアクチュアルになっていると思う。たしかに一般に、土地と人々の関係を巡って震災後に指摘されているのは、経済的な条件もさることながら、心情的に、住み慣れた土地を離れることの困難さである。だがその一方で、それでもやむを得ず、土地を離れざるをえない人々がいることも確かだ。そういう人々は、新しい場所で生活をはじめている。

そんな《たまたまここにいる人》が、どうしたら生活を充実したものにしていけるのか。そこをドネルモはずっと考えてきた。生存戦略とは、そういう意味だ。

福岡を愛する人々は、もうずっと前から、福岡のことを考えているのだろう。でもそれでも、問題は山積みだ。例えば、社会と個人とをつなぐ紐帯(中間共同体)やこれからの社会に対応したライフスタイル、その具体的なビジョンが刷新される必要性なんて、死ぬほど言われている。

ただその対応策が、既存の豊かさのビジョンをあてがうものでしかないのなら、あまりにも寂しい、というか、それではいけない。もっと多様なニーズとそれに対応した豊かさを、ここから想像していく力が必要だ。 

For a change,Proud to live here

では、そんな想像力はどこに?案外、思いもよらないニーズを持っているのは、《たまたまここにいる人》なのではないか。そして九州新幹線のCMが示すように、ユニークなしくみ(CM企画)を通じて、人々のニーズ(映りたい)が引き出され、それに対応した豊かさ(人々の振る舞い)が生まれることは、まだいくらでもあるのではないか。

そうしたしくみを通じて培われるのは、「珍しく、ここに住んでいること、なんかいいなって思う」気持ちだろう。

それは微かだけれど、自分の地域への誇りには違いない。そんな誇りを、少しずつ積み重ねていこう。すると、《たまたまここにいる人》の想像力は、地域を、自らの生活を、より充実したものにしようとして、それぞれに豊かさを編み出していくはずだ。

そんなエキサイティングな状況を、今年のドネルモは生み出していく。すでにいくつか、具体的なプロジェクトが昨年から動き出している。NPO法人になる今年、ドネルモでできることは、もっと広がっていくだろう。

さあ、みなさんご一緒に!

2012.1.10
ドネルモ代表 山内泰

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註1:トップの写真は、佐々木翔一さんに撮っていただいたもの。感謝。

註2:この文章のタイトルは、哲学者の東浩紀が、震災後、ニューヨークタイムズに寄稿した文章のタイトル「For a Change, Proud to Be Japanese」にインスパイアされたものであることを付記しておく。

 

 

 

文化系トークラジオLife

"祭りの時代" http://www.tbsradio.jp/life/20110828/

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伝統的な地域社会において、コミュニティを維持したり、非日常を生み出したりするしくみの一つが“祭り”だといえます。60〜70年代に、大都市圏の郊外ではたくさんのニュータウンが誕生し、そうした伝統的な文化や歴史がない場所でも、コミュニティの結束を高めたり、帰属意識を強めようと新しく”祭り”を作る運動がなされてきました。現在、そうした“祭り”は、町内会の盆踊りからロックフェス、コミケ、ネットの炎上まで、いい意味でも悪い意味でも、様々な活動への動員や新たにコミュニティを生み出す原動力として用いられています。

Lifeの“祭りの時代”の回では、《たまたまここにいる人》が今、どのように日常を楽しんだり、コミュニティを作ったり、恊働しているのかを“祭り”というキーワードを元に考察しています。ご興味のある方はぜひ!

 

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12/01/09 16:59 このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーのはてなブックマーク数 Buzzurlへ追加このエントリーのBuzzurlブックマーク数 livedoorクリップへ追加このエントリーのlivedoorクリップ数 Yahoo!ブックマークへ追加人が登録 POOKMARK Airlinesへ追加 Saafへ追加 ニフティクリップへ追加 add to del.icio.us add to Digg add to Reddit

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