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BOOKSTEADY Lesson9:「≪対立≫について論理的に考える」当日レポート!!


テキスト:中村幸
校正:笹野正和

BOOKSTEADY Lesson9:「≪対立≫について論理的に考える」

2013年9月14日(土)、BOOKSTEADY Lesson.9 「《対立》について論理的に考える」を開催いたしました。「BOOKSTEADY」は講師を囲んで、哲学・倫理・デザイン・アートなどの理論や実践について話す、少人数のレクチャー・シリーズです。

現代の最先端で繰り広げられる思考のありかたを独自の視点でフレーミングし、世界と自分をまったく新しい視点から見る方法をレッスンします。

今回のレッスンでは、哲学がご専門の須長一幸先生をお招きし、論理学の基礎とそれらを応用しながら日常の対立問題の解決方を皆さんと一緒に考えます。


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「対立」をミクロ的に、複層的にみる論理的思考

「死刑は廃止すべき/残すべき」、「憲法は改正すべき/すべきではない」等々、世の中にはさまざまな意見の対立があります。そして、私たちは誰かと意見が対立してしまった時、根拠となる自己の経験や感情につい固執し、頭ごなしに相手を否定してしまうことがあります。こうした衝突を解きほぐすヒントとなるのが、論理的思考なのです。

では、論理的思考がどのようにして衝突を解消する手がかりになるのでしょうか。たとえば、「Aである」と「Aではない」というそれぞれの主張は、全く相反するように見えますが、実際には完全な正面衝突をしているわけではありません。「Aである」も「Aではない」も、いずれも単一の主張ではなく、そこにいたる様々な根拠や理由といったさまざまな主張をその奥に含んだ、いわば「複層的な主張の最表面」なのです。

そして、「真理値」や「妥当」などの論理の基礎概念を把握し、さまざまな論証のパターンに習熟してゆくと、表面に現れた主張を手がかりに、その奥にある根拠や理由のネットワークやパターンを推測できるようになってくると先生は言います。対立を、単一の主張のぶつかり合いとして捉えてしまうと、どちらか一方が完全に折れることによってしか解決しません。しかし、よりミクロ的に、複層的な主張のネットワークの葛藤として対立を捉えることができれば、両者が歩み寄ることのできる余地が生まれます。

『半沢直樹』の「復讐」から考える

そこで、レッスンの前半では、練習問題としていくつかの議論に触れて、表面にあらわれた主張を手がかりに、その背景にあるネットワークを意識することを実践しました。そして後半では、実際の社会問題を論理的アプローチによって考えることに挑戦しました。

 

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高視聴率で話題となったテレビドラマ『半沢直樹』で注目された「復讐」がテーマです。「不正に対してわれわれは復讐を行ってよい」OR「どんな不正に対してもわれわれは復讐を行なってはならない」という対立する二つの立場について、それぞれの立場に立っている人は、どのような信念を前提としていると想定されるか、またそれらの立場を認めると彼らはどのような帰結を認めることになるか、ブレストしてみることになりました。 

【復讐はしても良い】

・「悪が制裁されず示しがつかない」 ・「やり返さなければずっとやられる」
・「法的な処罰のシステムは不十分であり、時間もかかる」
・「復讐の存在が抑止力をうみ、不正を減少させる」
・「不正への対処を法にゆだねてしまうことは自律性を損なう」

【復讐はしてはならない】

・「危害を加えてきた人も誰かに危害を加えられたのかも」
・「自分の行動が誤解された結果かもしれない」
・「同等の罰を与えることができるのか」 ・「また仕返しされるかもしれない」
・「根本的問題から目を逸らしている感じ」

 

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平行する主張が交わる場所を探す

このワークを実際にやってみると、私たちがどちらかの立場に立つと同時にそこに潜在する複数の前提や派生する結論を同時に認めていることに気付かされます。たとえば今回のテーマでは、「復讐はしても良い」と考える立場に立つ人は、無辜の人間一人一人の自律性や尊厳を重視し、それらを尊重することで社会全体の正義を実現しようとする信念体系を持っている、とまとめることができるでしょう。

一方で、「復讐はしてはならない」と考える立場に立つ人は、個人の行動は社会全体の反映にすぎない、と捉えているようです。個々人同士の衝突を、個々人同士で解消しあうと復讐の連鎖が生じてしまうので、重要なのは、むしろ不正が生じる土台そのものを改善してゆくことだ、というのがこの立場が依拠する信念体系だと言えるでしょう。これら二つの立場は相反する部分もありますが、不正を減少させ、社会正義を実現すべきであるという根本的な理念においては実は共通しています。

こういった視点は、対立の渦中ではなかなか生まれないものです。対立問題を論理学的アプローチで思考することは、それぞれの立場に立つ人がどんな価値観のもと、何を優先し重要だと思っているのかという前提条件に目を向けてその立場に至る過程や構造を掘り起こすことです。家庭や職場など日常で遭遇する対立や世の中で注目される社会的対立は、どこまでも平行線のままだと思われがちですが、実際には複数の要素から生まれており、目に見えているものの前後を展開してみた時に互いの理解への糸口を探る可能性が見出せるのではないかと感じました。

ご来場くださった方々、ありがとうございました!

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講師 : 須長 一幸(福岡大学教育開発支援機構教育学修支援室准教授・哲学)
ファシリテータ : 中村 幸
場所:冷泉荘1F多目的スペース
主催:ドネルモ
企画:中村 幸/須長 一幸

 


13/11/20 00:00 | コメント(0) | トラックバック(0) このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーのはてなブックマーク数 Buzzurlへ追加このエントリーのBuzzurlブックマーク数 livedoorクリップへ追加このエントリーのlivedoorクリップ数 Yahoo!ブックマークへ追加人が登録 POOKMARK Airlinesへ追加 Saafへ追加 ニフティクリップへ追加 add to del.icio.us add to Digg add to Reddit

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