仕事のしかたvol.1

これからの暮らしを自分たちでつくる

2014.4~ | 地域デザインの学校
少子高齢化や共働きにより社会状況が変化し、立ち行かなくなった地域活動のあり方を変えたい。

行政、自治会/公民館、商店連合会、大学(研究室)、医療/福祉事業所

これからの地域の暮らしを住民自ら考えるワークショップと、ヒアリングやアフターフォローを含む一連のプロジェクトを、福岡市内外の20以上の地域で実施。様々な活動が生まれています。

地域デザインの学校とは

様々な年代や立場の受講生が、対話と学び合いを通じて、「やりたいこと」や「興味があること」をきっかけに自分たちの生活圏で活動する人をつくる事業。2014年から福岡市、大牟田市、香春町、大分市など福岡県内外で実施しており、7年間で卒業生は300人を超える。

「地域デザインの学校」が始まったわけ

「地域活動」というと、みなさんはどのようなイメージを持たれますか。携わる人が高齢の方だったり固定化しがちだったり、なんだか関わりにくいなあといったようなことを想像されるかもしれません。地域デザインの学校(通称:地デザ)は、自分の住んでいる場所や生活圏を豊かにしたいと思っている人ってもっと幅広くいるのでは?そうした人たちがもっと活動しやすく、自らの生活圏で支え合いを広げる活動づくりための事業なんですね。

地デザは、福岡市の「共働事業提案制度」という制度を活用してスタートしました。NPOが事業企画を市に提案し、採択されると該当する担当部署と実行委員会を組織し、市が総事業費の5分の4以内を負担して協働で事業に取り組むというものです。一般に、委託事業は行政が作成する仕様書に則った事業遂行が求められますが、この制度は、NPOが市と対等な関係で一緒に仕様書を作成し、それぞれの専門性を活かしながら、事業を遂行するスキームになっています。ドネルモでは、地域デザインの学校が実現するまで2回の提案が不採用に終わった経験があります。間違いなく、過去2回の不採用は、私たちの提案内容の未熟さによるものだったんですが、行政組織のことをあまりに知らなかったんですね。それで、3度目の正直で提案して採択されたのが、現在の「地域デザインの学校」でした。

行政組織にとって、多くの場合「地域」といえば自治会などの地縁組織のこと指します(福岡市では小学校校区ごとに、自治会やその他の各種団体が集まった自治協議会が組織されている)。そうした組織に関わる人は、福岡市の調査によると市民の約3割です。一方で、当たり前なことですが、地域にはもっと色々な人がいます。住民だけではなく、事業者もいます。ふだんは「地域」に関わりのない残りの7割の層にどうアプローチするか、というのがこの地デザをはじめた、そもそものきっかけです。

 

「地域デザインの学校」では、どんなことをやっているのか?

地デザは参加者同士がお互いに学び合う共同学習を採用しています。実際の講座は、次のような内容を4日間で行います。

「地域デザインの学校」では、どんなことをやっているのか?

最も意識しているのは、「安心して発言できる場をいかにつくるか」ということ。「年齢や立場の異なる人たちが、対等に話し合い聞き合える」というのは、ゆくゆく地域で活動していくためにも大事なことです。お互いのできることをインタビューしたり、対話の場づくりのファシリテーションを体験したりすることで、一方的なコミュニケーションに陥らずに、「この人たちとなら何かできるかも」という気持ちが少しずつ生まれることを大事にしています。

地デザでは2つのことを同時に追いかけています。ひとつは「やりたいことを言語化して実行すること」。もうひとつは「他者と協働する可能性を探る」です。時々誤解されるのですが、地デザはアイデアづくり講座ではないんですね。なので、全員が鋭くおもしろい企画を立てたり、いわゆるイノベーションを生み出したりといったことが目的ではありません。ある人が強い思いでやりたい!と思っていることを、「だったら自分はこういうことで手伝える」「ひょっとしてあなたのやりたいことはこういうこと?」など、自分とは違う価値観や背景を持つ人と対話を繰り返すことで、一人ひとりが元々持っていた「やりたいこと」や「興味があること」がブラッシュアップされ、実現可能性が高まるところが醍醐味なんです。

 

「地域デザインの学校」で起きていること

地デザから生まれた活動例をいくつか。山口県防府市では、「発酵のおもしろさをもっと伝えたい!」というモチベーションがある方がいらっしゃいました。その企画を、広告関係で働いた経験のある方がワークショップのアイデアを出してサポート。さらに講座で出会った不動産会社の方が扱う古民家で、天然酵母パンを焼いて販売されるように。サポートした方たちは「自分がこのチームに参加するとは思わなかったけれど、強い思いに突き動かされました」とおっしゃっていました。


発酵体験ワークショップの様子(提供:発酵ラボ)

福岡市西区では、高齢者介護施設や福祉施設の職員さん、看護師さんなどがチームになって、「町内で100人知り合いをつくろう」と、清掃と廃品回収を始められました。2ヶ月に1回、土曜日の午前中に、子どもも一緒にゆるりと集まって、ワイワイ活動したあと、みんなで軽いお昼ご飯を食べたりして解散。すごいのは、ともすると義務的になりかねない活動が、みなさんが楽しそうにやっているので参加する人がどんどん増えていること。町内会のメンバーが高齢化したり、廃品回収が難しくなったりしていたところに、うまく接続してじわじわ地域に浸透している活動になっています。


清掃活動の様子(提供:きれいなプロジェクト)

 

ドネルモがやらないこと

「地域デザインの学校」ではいくつかのやらないと決めていることがあります。これはドネルモの思想と言ってもいいかもしれません。一つは「動員をしない」こと。例えば、行政などがワークショップを企画する際、自治会や町内会のみなさんが周囲の人に声を掛けて人集めをしてくれたりすることがありますが、そういったことはお断りしています。「声がかかったから参加した人」と、「興味をもって参加した人」のモチベーションの違いというのは、実はとても重要です。

また「先生にはならない」ということ。あくまでドネルモのスタッフはファシリテーター・学習支援者として、みなさんの自発性を促したり、一緒に考えたりする関係を大切にしています。地デザではとにかく参加者の自発性を重視しています。だって、自分たちの生活圏の支え合いを豊かにできるのは自分たちだから。そして、自発性は、「教える-教えられる」という関係ではなかなか生まれせん。

最後に「短期的な成果に一喜一憂しない」ということです。地デザの多くは自治体の予算を元に実施しています。なので、これも当然なのですが、成果としては参加者や卒業生の人数、生まれた活動の数などの指標が求められがちです。もっと数字を追えば事業の評価は短期的には上がるかもしれませんが、そうすると、本来求めていた「自分たちの生活圏を豊かにする」ということが実現できないのではないかと思うのです。一人の人間のライフサイクルの中でも、自分や家族以外の周りの人のために時間を使える時とそうでない時があります。「今は周りの人を頼りたい」「いずれ自分でも何かやりたい」という気持ちが芽生えることも、長期的に地域の活動の種を蒔くのも大切なはずです。

「自分だけではできない」という挫折の中から、自分とは異なる他者との関わりがはじめて模索されます。そうした関わりを通じて、はじめて自分たちの可能性が開かれる、という確信をもって取り組んでいます。

仕事のしかたvol.2

文化芸術×社会包摂の評価のこれから

2017.12~2021.3 | 文化庁×九州大学共同研究 「文化芸術による社会包摂の在り方」
共生社会の実現に向け、社会包摂につながる文化事業の評価について捉えなおし、文化・福祉事業に携わる人たちの後押しをしたい。

文化庁地域創生本部、九州大学ソーシャルアートラボ

社会包摂につながる文化事業に関する、先進的な事例や評価の実践方法を調査し、成果をまとめたハンドブック3冊を制作。2021年に書籍化されました。